交流の電気では「電圧×電流」がそのまま使える電力になるとは限りません。その割合を表すのが力率です。この記事では、力率の意味と、なぜ現場で「力率改善」が求められるのかを解説します。
力率とは
力率は、送られてきた電力のうち、実際に仕事をする電力の割合です。0〜1(または0〜100%)で表し、1に近いほど効率よく電気を使えていることを意味します。
力率 = 有効電力 P[W]÷ 皮相電力 S[V·A]= cosθ
θ(シータ)は電圧と電流の位相(タイミング)のずれです。電熱器のような抵抗負荷ではずれがなく、力率は1になります。モーターや蛍光灯の安定器のようにコイルを含む負荷では、電流が電圧より遅れるため、力率が1より小さくなります。
3つの電力と「電力の三角形」
| 名前 | 記号・単位 | 意味 |
|---|---|---|
| 有効電力 | P[W] | 熱や動力として実際に仕事をする電力 |
| 無効電力 | Q[var] | 電源と負荷の間を行き来するだけで仕事をしない電力 |
| 皮相電力 | S[V·A] | 電圧×電流。見かけ上の電力 |
3つは直角三角形の関係になっていて、S² = P² + Q² が成り立ちます。
計算例
単相100Vで電流10A、有効電力800Wのモーターの場合を考えます。
- 皮相電力 S = 100V × 10A = 1,000V·A
- 力率 = 800W ÷ 1,000V·A = 0.8(80%)
- 無効電力 Q = √(1,000² − 800²) = 600var
同じ800Wの仕事をする電熱器(力率1)なら、電流は8Aで済みます。力率が悪いと、同じ仕事に余分な電流が必要になるということです。電力の基本は電力とは?で解説しています。
力率が悪いと何が困るのか
- 電流が増えるぶん、電線での損失(発熱)や電圧降下が大きくなる
- 太い電線や大きな容量の変圧器が必要になる
- 高圧受電の需要家では、電気料金(基本料金)が割高になる
多くの電力会社の高圧契約では、力率85%を基準に、力率が1%上回るごとに基本料金を1%割り引き、下回るごとに1%割り増す仕組みがとられています(詳細は契約する電力会社の約款で確認してください)。
力率改善:進相コンデンサ
モーターなどの「遅れ」の電流を打ち消すために、進相コンデンサを負荷と並列に接続します。コンデンサには電流を「進ませる」性質があるため、遅れの無効電力を相殺して力率を1に近づけられます。
ただし、コンデンサを入れすぎると逆に「進み力率」になり、電圧上昇などの問題が起きます。軽負荷時にはコンデンサを切り離す自動力率調整装置が使われることもあります。
まとめ
- 力率は有効電力÷皮相電力(cosθ)で、1に近いほど効率がよい
- 有効電力P・無効電力Q・皮相電力Sは直角三角形の関係(S² = P² + Q²)
- 力率が悪いと電流・損失・電気料金が増える。進相コンデンサで改善する
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参考文献
- 電気学会『電気工学ハンドブック』
- 各電力会社 高圧電力契約の電気供給約款(力率割引・割増)

